介護の求人に人が来ない理由|採用する側にいた僕が見たこと

「来ないねー」

これが、求人を出しても応募が無かったときの、うちの会社の口癖でした。

介護の仕事を16年やりました。1社目に5年、2社目に11年です。途中からは採用の面接にも入っていました。

介護は人手不足だと言われます。実際そのとおりで、資格を持っていて経験もある人なら、電話した当日に面接、翌日から勤務ということも普通にあります。それくらい現場は人を欲しがっています。

それでも、うちには人が来ませんでした。

ここで分けて考えたほうがいいことがあります。それは「人手不足だから」なのか、「その職場が選ばれていないから」なのかです。同じように見えて、まったく別の話です。

この記事では、募集を出す側にいた人間として実際に何が起きていたのかと、職場を選ぶときにどこを見ればいいのかを書きます。

介護の採用は任されていた、でも報酬は決められなかった

面接をして、この人を採る、この人は見送る、という判断は僕の権限でした。人を入れる責任は、現場にありました。

一方で、いくらで募集をかけるかを決める権限はありませんでした。

ここにずっとギャップがありました。人が来ないのは条件のせいだと分かっていても、その条件を動かせるところに僕はいませんでした。そして動かせる人は、現場にいませんでした。

介護の求人をハローワークに出し続けても応募が来ない理由

会社は報酬を上げませんでした。採用にお金をかけることもしませんでした。無料で出せるところに求人を出し続けて、応募がないまま「来ないねー」で終わる。それが何年も続きました。

あとになって、自分が転職するときに知ったことがあります。ハローワークは、企業側が無料で求人を出せます。つまり採用にお金をかけられない事業所も、かけるつもりのない事業所も、同じところに並びます。

良い求人もたくさんあります。ただ、載っているという事実だけでは何も分かりません。うちはお金をかけられなかったのではなく、かけていませんでした。それでも求人は出続けていました。

介護現場の業務改善で残業を消したら、人員配置は戻らなかった

途中から、僕と同期で業務の改善に回った時期があります。1日の流れを細かく洗い出して、無駄を削って、残業をほぼ消しました。休憩も取れるようにしました。

効果はありました。辞める人は減りました。年に1人くらいは採用もできるようになりました。

それで、配置は戻りませんでした。

返ってきたのは「その人数で回せるんでしょ」でした。改善して回るようになったこと自体が、人を増やさない理由になりました。

現場が努力して余力を作っても、その余力は現場に返ってきません。会社が回収します。僕が学んだのはそれでした。

介護職の有給は、取らせるものではなく作るものだった

有給は、最低でも半分以上は消化させると決めていました。制度としてあるものが、人が足りないという理由で使えないのはおかしいと思っていたからです。

ただ、人を増やしてもらえるわけではないので、抜けた分は誰かが埋めます。だいたい僕が埋めました。

人数が足りない日は、現場を僕ひとりで回して、上司にはフロアにいてもらうだけ、という形をとっていました。業務をしてもらうのではなく、そこに目がある状態を作ってもらう。何かあったら呼んでもらえばいい。そうすると僕はその場を離れて、別の業務を進められました。

やり方としてはうまくいっていたと思います。ただ、そこまでしないと有給が回らない配置だったということでもあります。

介護で採用できた人が、2日目に来なかった

ある年、採用が決まった人がいました。

初日は、オリエンテーションをしてから現場に入りました。指導は僕でした。業務は一切させていません。僕が動くのを横で見てもらって、その都度説明する。初日はそれだけです。

雰囲気は悪くありませんでした。利用者とも和やかに進んでいました。怒鳴られることも、険悪な空気になることもありませんでした。

2日目、その人は来ませんでした。

たぶん、見えてしまった

理由を本人に聞いたわけではないので、これは僕の推測です。

その日、僕は急いでいる空気を出さないように動いていました。初日の人を不安にさせたくなかったからです。ただ、落ち着いて見えていただけで、実際には止まっている時間はほとんどありませんでした。そうやってようやく回る量が、その日の業務でした。

その人は業務をしていません。見ていただけです。それでも、1日あれば分かります。指導役が一日中動き続けて、ようやく回っている。ここに自分が入って、同じことができるだろうか。

ここで大事なのは、環境が悪かったわけではないということです。人間関係も、その日の空気も悪くなかった。見せられる中でいちばんまともな1日を見せて、それで来なくなりました。

だから、募集の出し方の問題ではありませんでした。条件と業務量の問題でした。

介護の求人票にも面接にも出てこないもの

介護の求人票には、給与も、休日数も、夜勤の回数も書いてあります。面接に行けば雰囲気は分かります。見学させてもらえば、建物もスタッフの様子も見えます。

でも、そこに出てこないものがあります。

そのフロアが何人で回っているのか。その人数は最近減ったのか。減ったあとに業務は減ったのか。今いるスタッフが、どれくらい動き続けてようやく回っているのか。

僕自身、採用する側にいながら、隠していたわけではありません。聞かれれば答えましたし、現場も見てもらっていました。それでも、1日いないと分からない部分は確かにありました。

だから、職場を選ぶときに見るべきなのは条件面だけではありません。人数と業務量が釣り合っているかです。ここが崩れている職場は、入ってから分かります。

では、どうやって確かめるか。いちばん現実的なのは、面接の最後に現場を見せてもらうことです。採用する側にいた立場から言うと、あれを断る理由がありません。

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介護を続けるなら、職場を変えるという選択肢がある

まともな職場は、絶対にあります。

そして今の介護業界では、資格があって経験もある人は、どこの現場でも確実に戦力です。僕が採用する側で欲しかったのも、まさにそういう人でした。ゼロからのやり直しにはなりません。

ただし、ひとつだけ。

僕は1社目から2社目に移るとき、ハローワークで自分ひとりで探しました。結果として、11年いた2社目のほうが退職金は少なくなりました。5年で70万円、11年で50万円です。

移ったのに、条件は良くなりませんでした。人数と業務量どころか、条件面すら確かめきれていなかったということです。

移るなら、そこを確かめる手段は持っておいたほうがいいと思います。

介護の仕事そのものが限界なら、異業種へ離れていい

もう一方の答えも書いておきます。

職場の問題ではなく、介護という仕事そのものがもう限界だと感じているなら、離れていいと思います。僕は最終的にそうしました。

ただ、そのときにつまずいたことがあります。自分の強みが、自分では言葉にできませんでした。

介護しかやってこなかったので、介護以外で通用するものが自分にあるとは思えなかった。分かったのは、転職エージェントの人と何人か話してからです。自分では強みだと思っていなかったことが、外から見ると強みだった、ということが何度かありました。

まとめ:介護の求人に人が来ないのは職場の条件と業務量の問題

介護は人手不足です。でも、人が来ない職場には理由があります。募集の出し方ではなく、条件と業務量が釣り合っていないからです。そしてその業務量は、求人票にも面接にも書かれていません。

職場が原因なら、介護を諦める必要はありません。経験者はどこでも戦力です。仕事そのものが限界なら、離れていい。

どちらにしても、共通していることがひとつあります。条件を確かめる手段を持ってから動くこと。僕は一度それをせずに動いて、良くならなかった側の人間です。

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