介護を辞めたいけれど、異業種に移るのは怖い。
その気持ちは、よく分かります。僕もそうでした。
介護の専門学校を出て、そのまま介護の仕事に就きました。16年やりました。1社目に5年、2社目に11年です。他の業種の経験といえば、学生の頃の飲食店とスーパーのアルバイトくらい。それ以外の世界を、僕は何も知りませんでした。
結論から書くと、39歳で異業種に移りました。今は事務管理の仕事をしています。
この記事では、何が怖かったのか、実際に移ってみて介護の経験の何が活きて、何が活きなかったのかを書きます。「介護の経験は必ず活きます」というきれいな話ではありません。活きなかったものもはっきり書きます。
介護しかやってこなかったから、異業種への転職が怖かった
怖かった理由は、単純です。
介護以外の仕事を、何も知らなかったからです。
専門学校で介護を学んで、卒業してすぐ介護の現場に入りました。資格も介護福祉士と社会福祉主事です。潰しが利かない、とよく言われる経歴でした。
異業種の求人を見ても、書いてある仕事の中身がそもそも想像できませんでした。何をする仕事なのか分からない。分からないから、自分にできるかどうかも判断できない。できるかどうか分からないものに応募するのが、怖かったのだと思います。
「向いていないかもしれない」より前に、「向いているかどうかを判断する材料がない」という段階でした。
未経験であることを、隠さないことにした
移ってからやったことは、単純です。
できないこと、分からないことを、そのままはっきり伝えました。
39歳で入って、周りは全員先輩です。年下でも先輩です。取り繕っても意味がないので、新卒のつもりでやることにしました。
これは精神論ではなく、実務的な話でもあります。分かったふりをして進めると、後で必ず手戻りが出ます。手戻りの方が、聞くよりよほど迷惑をかけます。
介護の経験が異業種で活きたこと
ここは想像ではなく、移ってから実際に「これがあってよかった」と思った場面があるものだけを書きます。
言葉になっていないものを読む力
介護の現場では、言葉を話さない方、話せない方と毎日向き合います。表情や声の調子、体の向き、そのときの空気から、その人が何を感じているかを読み取る必要があります。読み違えれば、事故につながることもあります。
この力は、そのまま一般の職場でも使えました。
会議で何も言わない人が、納得しているのか、言えないだけなのか。頼まれた仕事が、本当に急ぎなのか、そう言っているだけなのか。言葉になっていない情報を拾うのは、介護で毎日やっていたことでした。
傾聴
介護をやってきた人は、人の話を聞く力が桁違いだと思います。
途中で遮らない。結論を急がせない。相手が話し終わるまで待つ。これは意識してやっているというより、体に入っています。介護の現場では、それをしないと仕事にならないからです。
移ってから、この当たり前が当たり前ではないと知りました。
怒りを、返さずに受け止められる
そして、これが一番大きかったと思っています。
介護の現場では、相手が怒っているときに、こちらが怒り返しても何も良くなりません。状況が悪化するだけです。だから、怒りを受け止めて、返さない。その動き方が、仕事として身につきます。
異業種に移って、この場面で普通は言い返すのか、と思うことが何度もありました。
「よく我慢できるね」と言われることもあります。正直なところ、僕の感覚では我慢しているつもりはあまりありません。この程度のことで感情を返しても、時間が無駄になるだけだと体が覚えているだけです。
これは性格ではなく、訓練されて身につくものだと思います。そして、それが訓練される職場は、そう多くありません。介護をやってきた人が持っている、気づきにくい強みです。
介護の事務経験は、異業種では活きなかった
ここは正直に書きます。
介護の現場でやっていた事務処理は、専門性としてはほとんど通用しませんでした。
介護の仕事でも記録や書類仕事はあります。パソコンも使います。だから「事務なら何とかなるだろう」と思っていました。
実際は、初歩の初歩でした。
できるつもりで行くと、痛い目を見ます。僕はここで一度つまずきました。
「介護の事務経験も活かせます」と書いてあるのを見かけますが、少なくとも僕の場合は、事務経験としてカウントできるようなものではありませんでした。ゼロから覚え直すつもりで行ったほうがいいと思います。
これを書いておくのは、脅すためではありません。ここを勘違いしていると、入ってから「思っていたのと違う」となって、また辞めることになるからです。最初から新人として入るつもりなら、何の問題もありません。
39歳での未経験転職は、年齢がハンデになるか
正直に言うと、飲み込みは圧倒的に落ちていました。
若い頃なら一度で覚えられたことが、覚えられません。同じことを何度も聞くことになります。
やったのは、隠さないことだけです。「何度も聞いてしまって申し訳ないです」と言いながら、その都度聞きました。分からないまま進めるより、聞いたほうが圧倒的に良い。これは間違いありません。
年齢がハンデかと言われれば、覚える速さという意味ではハンデです。ただ、それは聞き方でカバーできる範囲でした。
介護から転職する前に、条件を確かめておいたほうがいい
ここまで読んで、意外と何とかなるのかもしれない、と思ってもらえたなら嬉しいです。ただ、ひとつだけ書いておきたいことがあります。
僕は介護時代に一度、職場を変えています。1社目を5年で辞めて、2社目に移りました。探し方はハローワークで、自分ひとりでした。
結果として、11年いた2社目のほうが、退職金は少なくなりました。1社目が5年で70万円、2社目が11年で50万円です。
長くいたほうが少ない。移ったのに、条件は良くならなかったということです。
当時の僕は、求人票に書いてある条件の意味を、正確には分かっていませんでした。何を確かめればいいのかを知らなかった、と言ったほうが正しいかもしれません。
だから、今から動く人には、条件を確かめる手段を持ってから動いてほしいと思っています。僕は現職に移るときには、転職サイトに登録しました。自分ひとりで求人票を読んで判断するのをやめた、ということです。
まとめ:介護から異業種への転職は、怖さの中身を分けて考える
介護から異業種は、怖いです。僕も怖かったです。
ただ、移ってみて分かったのは、怖さの中身の多くが「知らない」から来ていたということでした。何をする仕事なのか分からない、自分にできるか分からない。分からないことが怖いのであって、できないと決まっていたわけではありませんでした。
介護で身についたもののうち、人と向き合う部分は、そのまま強みとして通用します。事務のような技術の部分は、正直あてになりません。そこを分けて考えられれば、判断はしやすくなると思います。
そのうえで、条件を確かめる手段だけは持ってから動いてください。僕は一度、それを持たずに動いて、良くならなかった側の人間です。

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