残業の裏取りを何か月もやりました|介護の管理職の仕事内容と、その対価

介護の管理職は、実際に何をやっているのか。

現場にいた頃は、よく分かっていませんでした。事務所で何か書類をやっている、くらいの認識です。

自分が役職についてから分かったのは、業務が増えること自体より、その時間をどこから捻出するかのほうが問題だったということでした。

介護の仕事を16年やりました。1社目に5年、2社目に11年です。この記事では、役職がついた後に実際にやっていたことを書きます。

読み終えたときに、介護の役職手当が何の対価なのかが、たぶん見えていると思います。

介護の管理職の業務時間は、どこからも出てこない

最初に書いておきたいのは、これです。

役職がついても、通常業務は減りません。人手が足りていないので、現場には入り続けます。

そして、管理業務のための時間は、別途もらえるわけではありません。

自分で隙間を作って、そこに入れるしかない。

削れるものは、自分の余白だけです。休憩の時間、記録を書く合間、現場が落ち着いている数十分。そこに管理業務を差し込んでいきます。

介護の管理職には、上から2つのことだけが降りてくる

上から言われることは、だいたい決まっていました。

  • 稼働率を上げろ
  • 人件費、つまり残業代を減らせ

この2つです。

どちらも、現場から見ると逆を向いています。稼働率を上げれば業務は増えます。業務が増えれば残業も増えます。その両方を同時に、人を増やさずに解決しろということです。

この矛盾を現場で吸収する役が、役職者でした。

残業を減らすために、24時間を10分単位で洗い出した

残業を減らせと言われて、まずやったのは業務の洗い出しです。

1日のタイムテーブルを、10分単位で全部書き出しました。誰が、何時何分に、何をしているか。

そうすると、重なっている時間帯と、空いている時間帯が見えます。人が足りないのではなく、同じ時間に集中していただけ、という業務がいくつも出てきました。

そこを組み替えて、残業をほぼ消しました。休憩も取れるようにしました。

この作業自体も、通常業務の合間にやっています。別途の時間はもらえないからです。

残業しなくていい体制を作った後も、残業代は上がってきた

ここからが本題です。

体制を整えた後も、毎月、特定の人からだけ残業の申請が上がってきていました。

先に書いておきたいのは、残業の申請そのものは、まったく問題ないということです。

介護は対人の仕事なので、イレギュラーは常に起きます。通院に付き添って遅くなる日もあれば、救急搬送が起きる日もあります。そういう日に残業が発生するのは当然で、申請は正当な権利です。

問題は、何も特変のない日にも上がってきていたことでした。

そして上からは、こう聞かれます。

「なんでこの人だけ残業が多いの」

現場で起きていることを、上に説明する役も役職者です。分からないままでは、答えようがありません。

調べたら、組み合わせで偏りがあった

そこで、いつ申請が出ているかを並べてみました。

すると、はっきりした偏りが出ました。

僕や上司、あるいは判断を任せられるスタッフが同じ日にいるときは、申請が出ていません。出ているのは、そうでない組み合わせの日だけでした。

聞き取りをしたところ、業務は終わっていました。終わった後に帰らず、話し込んでいた時間が申請に乗っていた、ということです。

これは、その人が特別だったという話にはしたくありません。申請が通ってしまう仕組みだった、というほうが正確です。

申請書には、その日に何があったかまでは書きません。誰と組んだ日かも並べません。だから、横に並べて比べない限り、偏りは見えないままになります。

やった対応は、理由を聞くことだけだった

本人以外のメンバーで話し合って、まず決めたのはこれです。

残業した日は、その理由を聞く。

残業しなくていい体制はすでに作ってあるので、残ったということは何かあったはずです。だったら、それを教えてもらう。

責める形にはしませんでした。理由があるなら、こちらが把握しておく必要があるからです。

これで、申請は止まりました。

数か月後、また始まった

ただ、しばらく経つと、また同じ形で上がってくるようになりました。

一度で終わらない。ここが、この仕事のいちばん消耗するところだと思います。

そこで、次の形にしました。

その日に一緒に組んでいた複数のスタッフに確認が取れたら、残業として処理する。

誰か一人の記憶に頼らず、複数から裏を取る。取れれば当然そのまま処理します。

これで収まりました。

ただし、確認する手間は全部こちらに乗ります。毎月、誰がその日にいたかを調べて、一人ずつ聞いて回る。

正直に書くと、かなり面倒でした。

介護の管理職で消耗するのは、業務量ではない

ここまで書いてきて、自分でも整理がつきました。

管理職の仕事できついのは、業務が増えることそのものではありません。

同じ問題に、何度も付き合わされることです。

一度対応して終わるなら、まだいい。でも戻ります。戻るたびに、前より手間のかかる仕組みを作ることになります。そしてその手間は、全部こちらの時間から出ていきます。

問題のあるスタッフとの面談も同じです。何度も行われます。言って分かる相手なら、そもそも問題になっていません。

そして、何かあったときに怒られるのは役職者です。

板挟みが嫌で、辞めてきた人がいた

途中で入ってきた同僚に、前の職場で管理職をやっていた人がいました。

辞めた理由は、板挟みだったそうです。

稼働率をきつく言われ、休みの日にもほぼ連絡が来ていた、と話していました。

その話を聞いて、分かる、と思いました。構造は、どこも似ているのだと思います。

やっていたのは、自分がいなくても回る形を作ること

そのうえで、自分なりに決めていたことがあります。

ひとつは、現場で判断を下せるスタッフを、きちんと配置すること。

役職がなくても、任せられる人はいます。むしろ、一般スタッフのままにしておくのが勿体ないくらいの人がいました。本人が昇進を望まないタイプだっただけです。

その人か自分のどちらかが現場にいる形で、シフトを組んでいました。どうしても作れない日は、上司にフロアにいてもらう。業務をしてもらう必要はありません。判断できる人がその場にいる、という状態を作るだけです。

もうひとつは、上に上げる報告を絞ること。

何でもかんでも上げると、確認と説明で時間が溶けます。判断が要ることだけを上げて、あとは現場で完結させる。

そして3つめが、休日に出てこなくていい形を作ること。

これは自分のためでもありますが、後任のためでもあります。休日に呼ばれる前提の役職にしてしまうと、誰も引き受けなくなります。

これで、月9,000円でした

最後に、お金の話に戻ります。

僕が最初に断った昇進の話では、管理職手当は月9,000円でした。

ここまで書いてきたことが、その9,000円の中身です。

  • 通常業務は減らないまま、管理業務を隙間に入れる
  • 稼働率を上げろと人件費を減らせを、同時に現場で処理する
  • 残業の申請を毎月調べて、裏を取る
  • 話が通じにくい相手と、何度も面談する
  • 何かあったときに、怒られる

この額をどう見るかは、読んだ方それぞれだと思います。

僕は計算して断りました。その判断は、今も間違っていなかったと思っています。

昇進を断りました|介護の管理職は手当9,000円で、夜勤手当4万円が消えるからです

この設計も、職場によって違います

ここまで書いたのは、僕がいた職場の話です。

管理職の手当も、夜勤を外すかどうかも、どこまでを役職者の裁量にするかも、職場ごとに違います。そして、それは求人票には書いてありません。

僕は条件を確かめないまま職場を変えて、失敗した側です。

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