介護の職場を見学したいと思って調べると、チェックリストが山ほど出てきます。
建物、設備、居室、浴室、機能訓練室、レクリエーションの充実度、清潔感、安全性。20項目くらい並んでいることも珍しくありません。
ただ、あれを読んで実際に見学を申し込んだ人が、どれくらいいるでしょうか。
介護の仕事を16年やって、途中からは採用の面接にも入っていました。その立場から言うと、働きたい人が見学だけを先に申し込んでくる、ということはほとんどありませんでした。
この記事で書くのは、見学の申し込み方ではありません。介護の面接の最後に必ず聞かれる「何か質問はありますか」で、現場を見せてもらうという方法です。逆質問に何を用意すればいいか迷っている方にも、そのまま使えると思います。
介護の職場見学を先に申し込む人が、ほぼいない理由
理由は単純で、二度手間だからです。
見学に行って、良さそうだと思う。じゃあ別の日に面接を受けに行く。同じ場所に2回行くことになります。
逆に、見学して「ここはやめておこう」と思ったら、その日は完全に無駄足です。
介護で働きながら転職活動をしている人が使えるのは、休みか夜勤明けです。その貴重な時間を2回使う前提の方法を、誰が選ぶでしょうか。
そして採用する側も、同じように二度手間です。見学の対応で人を割いて、後日また面接で時間を取る。人が足りていない現場ほど、この負担は大きい。
つまり、見学を先に申し込む方法は、応募する側にとっても採用する側にとっても効率が悪い。だから定着していないんだと思います。
チェックリストの多くは、入居先を探す家族向けに書かれている
もうひとつ、気づいたことがあります。
「介護施設 見学 チェックポイント」で調べて出てくる記事の多くは、働く人向けではなく、入居先を探している家族向けです。
入居する施設を選ぶなら、見学は当然です。何年も暮らす場所なので、複数の施設を回って比べる。居室の日当たり、費用の内訳、面会のルール。時間をかけて確かめる価値があります。
でも、働く側が見るところは違います。そして、確かめられる時間も、見られる場所も違う。
入居検討の作法をそのまま持ち込んでも、噛み合いません。
介護の面接の逆質問は「現場を見せてください」でいい
では、どうするか。
面接の最後です。
ほとんどの面接は、最後に「何か質問はありますか」で終わります。あそこで、現場を見せてもらえないか聞けばいい。
採用する側の本音を書くと、これを断る理由がありません。
介護は人手不足です。資格があって経験もある人なら、当日電話をもらって、その日のうちに面接、翌日から勤務ということも起こる業界です。まともに働いてくれそうな人であれば、基本的には採りたい。
その相手から「現場を見せてほしい」と言われて、断る理屈が立ちません。むしろ、働くことを具体的に考えてくれている人だと受け取ります。
しかも、1回の訪問で面接と現場確認が終わる。応募する側も、採用する側も手間が減ります。
介護の面接は、食事の時間を外して設定される
ここからは、実際に何が見られるかの話です。
面接の時間は、応募者と施設側のすり合わせで決まります。こちらの都合もある程度は聞いてもらえます。
ただ、施設側から提示される時間帯には偏りがあります。だいたい10時、11時、14時、15時あたりです。
理由は、食事の時間を外すからです。朝夕の申し送りが終わって、食事が始まるまでの間。食事の時間帯は現場が最も忙しく、面接に人を割ける状態ではありません。
だから、面接のついでに見る現場は、この時間帯のフロアになります。
介護のレクを見れば、スタッフの質が一番出る
10時台や14時台は、レクリエーションをやっていることが多い時間です。
ここで見るのは、ひとつだけでいいと思っています。
スタッフが、利用者と一緒に楽しんでいるかどうか。
うまい人は、利用者と一緒になってわーわー言いながらやっています。場が勝手に温まる。
そうでない場合は、利用者にやらされている感が出ます。盛り上がっていない。スタッフが進行しているだけで、参加している人の顔が動いていない。
この差は、介護をやったことがない人でも、部屋に入った瞬間に分かります。専門知識は要りません。
企業が作ったチェックリストには「レクリエーションの充実度」と書いてありますが、種類が多いかどうかより、この一点のほうが職場の状態を表していると思います。
介護の食事介助を見たいなら、その時間を希望していい
面接は食事の時間を外して設定されますが、「食事の時間に見せてもらえませんか」と希望を出すこと自体は、断られる理由がありません。
忙しい時間ではあるので、必ず通るとは限りません。ただ、頼んではいけないことでもない。見せられて困る現場でなければ、応じてもらえるはずです。
食事介助で見るのは、技術の細かさではありません。
自分がされたら嫌なことを、していないかどうかです。
たとえば、ご飯の上に数種類のおかずを乗せて、混ぜてしまう。自分で食べるとき、そんな食べ方をする人はまずいません。それを介助のときにはやってしまう。
ほかにも、次々に口へ運んで飲み込む間を与えていないか。声をかけずに口元へスプーンを出していないか。今何を食べているのかを、本人に見せているか。立ったまま上から介助していないか。
どれも、介護の基本です。
問題は、こういうやり方が続いていること自体ではなく、やっている本人に自覚がなく、それを誰も指摘していないという状態のほうです。
ひとりの技術の話ではなく、その職場に「おかしいことをおかしいと言う」文化があるかどうかが出ます。
介護施設の浴室は、入浴時間でなければ見られる
浴室は、入浴の時間帯でなければ入れます。面接は食事時間を外して設定されるので、浴室が見られる可能性は高いほうです。
そして、使っていない時間の状態のほうが、かえって分かります。
物が雑多に置かれている。片付いていない。清掃が行き届いていない。こういう状態のときは、現場に余裕がなくて回っていないことが多い。
トイレも同じです。
誰も見ていない場所、後回しにできる場所がどうなっているかは、人員配置と業務量が釣り合っているかの結果として出ます。
介護施設で唯一演出できないのは、利用者の表情
もうひとつ、見学の場で取り繕えないものがあります。
利用者が、スタッフに対してどんな顔をしているかです。
認知症というのは不思議なもので、出来事そのものは覚えていないことが多いのに、「この人に何か嫌なことをされた」という感覚だけが残っていることがあります。
そして、それは表情に出ます。
特定のスタッフが近づいたときだけ表情が硬くなる。目を合わせない。逆に、笑いかけている相手がいる。
見学者の前だけ優しくしても、そこまでは変えられません。日々の関係が、そのまま出ます。
建物や設備は、見学の日に合わせて整えられます。利用者の表情は整えられません。
介護スタッフの言葉遣いは、敬語かどうかより節度を見る
介護の基本は敬語だと言われます。
ただ、個人的にはずっと引っかかっていました。アットホームな雰囲気を掲げていたり、家のような場所であることをコンセプトにしている施設で、すべてが硬い敬語というのは、掲げているものと合っているのだろうかと。
これは僕の考え方なので、正解として書くつもりはありません。
ただ、見学のときに見るなら、敬語かどうかより、節度があるかどうかだと思います。
明らかにおかしい言葉遣い、子ども扱いするような話し方、命令口調。これらは職場の質として出ます。一方で、ある程度砕けた敬語で自然に話しているスタッフが多い職場のほうが、僕は好感を持ちます。
介護の職場見学で、居室は見られない
最後に、見られないものも書いておきます。
居室には入れません。そこで生活している方のプライバシーがあるので、当然です。
チェックリストに「居室の日当たり」「コンセントの位置」と書いてあることがありますが、それは入居先を検討する家族向けの話です。働く側が面接のついでに見る、というものではありません。
見られないものを見ようとするより、見られたものを深く見るほうが役に立ちます。
まとめ:介護の職場は、面接の最後に見せてもらう
整理します。
- 働く側が見学だけを先に申し込むのは、二度手間で現実的ではない
- 面接の最後の「何か質問はありますか」で、現場を見せてもらう
- 人手不足の業界なので、断られる理由がない。採用側も手間が減る
- 面接は食事時間を外すので、10時・11時・14時・15時あたりが多い
- その時間帯はレクに当たりやすい。見るのはスタッフが一緒に楽しんでいるか
- 食事介助を見たいなら、その時間を希望していい
- 浴室・トイレは、使っていない時間の状態に余裕が出る
- 利用者の表情は演出できない
- 居室は見られない
求人票には、給与も休日数も夜勤の回数も書いてあります。でも、その職場が何人で回っていて、どれくらいの余裕があるのかは書いてありません。
それを確かめられる機会が、面接の最後の数分です。
僕自身は、この確認をしないまま介護の職場を一度変えました。結果として、11年いた2社目のほうが退職金は少なくなっています。5年で70万円、11年で50万円です。
介護の退職金は少ない?5年で70万、11年で50万だった僕の実例
求人票からは分からないことが、その場に行けば見えることがあります。せっかく足を運ぶなら、面接だけで帰らないほうがいいと思います。

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