介護のやばい上司と部下の間に立った話|権限がなくてもできたこと

介護の職場で人が辞めるとき、理由の上位に必ず人間関係が入ります。

そして、その人間関係の中身をたどっていくと、たいてい特定の一人にぶつかります。やばい人がひとりいるだけで、現場の定着率は下がる。16年やってきて、これはほぼ間違いないと思っています。

問題は、その人が上司だった場合です。しかも自分より立場が下だった場合、どうにもできません。

この記事は、その状況で僕がやっていたことの話です。

介護の職場でやばい上司がいると、人が辞めていく

当時の職場に、ひとり困った上司がいました。

事実だけ書きます。

休みの日も、夜勤入りの前も、夜勤明けで仕事が終わったあとも、職場に来ていました。深夜も早朝も関係なく、ほぼ毎日います。

ただ、来て何かが進んでいるかというと、そうでもありません。作業効率は良くなかった。長い時間そこにいる、という状態が続いていました。

そして、自分がそういう働き方をしているので、他のスタッフが残業していても何とも思わない。残業が当たり前の前提になっていました。

その一方で、残業代の申請には渋い顔をします。自分の財布から出るわけではありません。確認の判を押すだけの立場です。それでも渋る。

介護の技術も、正直まちまちでした。あとから業務の見直しをしたときに「これは誰がやっているんだ」となった手順があって、たどってみたらその人でした。

直接は言わない上司ほど、現場は張り詰める

厄介だったのは、この上司が本人に直接言わないタイプだったことです。

自分の考えと違うことが起きると、不満を持つ。でも当人には言わない。別の場所で言う。

言われた側は、何がまずかったのか分かりません。ただ、なんとなく責められている空気だけが残る。これが一番きついやり方だと思います。

僕が間に入る前の現場は、かなり張り詰めていました。ぶつかる人はぶつかるし、言い返さない人はただ黙って抱えている。どちらも長くは続きません。

その状態のまま置いておけば、人は辞めます。実際、そういう職場はいくらでもあります。

介護の現場で、上司と部下の間に立つという役割

そこで僕がやっていたのは、単純です。

間に入って、直接やりとりさせないことでした。

これは僕の仕事ではありません。誰かに頼まれたわけでもない。役職の話でもなく、当時はまだ正式な立場もありませんでした。

それでもやったのは、他のスタッフが普通に頑張っていたからです。ちゃんとやっている人が、あの人のせいで潰れていくのが納得いかなかった。理由はそれだけです。

上司の言動に「意図があったこと」にして部下に伝える

部下側へのフォローから書きます。

上司の言動で誰かが落ち込んでいるとき、僕はこう言っていました。

「あれは、こういう意図があって言ったんだと思うよ」

正直に書きます。そんな意図はありません。

本人にそこまでの考えがあったとは思っていないし、確認したわけでもない。ただ「そういう意図があったらいいね」という内容を、僕が考えて渡していただけです。

これが成立するのは、上司と部下が、その件について直接話さないからです。話さないから、僕が渡した説明が食い違うこともない。

ずるいやり方かもしれません。ただ、これで落ち込んでいた人が納得して、次の日も普通に来られるなら、それでよかったと思っています。

誰かを傷つける嘘ではありませんでした。

上司には、上司が損をする形に翻訳して伝える

上司側へのフォローは、やり方が違います。

正面から否定すると、角が立ちます。「それは間違っています」と言っても通りません。だから、上司自身が困る形に言い換えて伝えていました。

ひとつ例を書きます。

体調不良で休みたいと連絡してきたスタッフに対して、その上司は「気合いで来い」というようなことを言っていました。

これに対して、僕はこう言います。

「無理に出てきて感染が広がったら、現場が回らなくなりますよ。悪化して長期で離脱されるほうが、もっと困ります」

言っている中身は「休ませてやってください」です。でも、そうは言わない。上司にとって何が損なのかに置き換えて話す。

正しさで押しても、この手の人は動きません。損得の話にすると、割と通ります。

介護の職場は、間に一人入るだけで変わる

やっていたことをまとめると、こうです。

  • 部下には、上司の言動に意図があったことにして伝える
  • 上司には、正面から否定せず、上司が損をする形に言い換えて伝える
  • 両者が直接やりとりする場面を減らす

結果として何が起きたか。

スタッフが、その上司と直接やりとりしなくてよくなりました。僕に言えば済むからです。

張り詰めていた空気は、これでだいぶ収まりました。ぶつかることも、黙って抱えることも減りました。

その後、条件面で辞める人はいました。給料が上がらない、家庭の事情、そういう理由です。ただ、職場環境が理由で辞めた人は、いなくなりました。

辞めた人の本当の理由も、だいたい把握していました。人間関係は入っていませんでした。

ここまでやっても、手当はつきません

ひとつ、現実的な話を書いておきます。

間に立つ仕事には、対価がありません。

当時の僕は正式な立場もなかったので当然として、この手の仕事は役職に就いたところで、見合った額にはなりません。残業の裏取りも、シフトの調整も、人の間に入ることも、全部その中に含まれます。

僕が実際に見ていた管理職の仕事の中身と、その対価については別の記事に書きました。

残業の裏取りを何か月もやりました|介護の管理職の仕事内容と、その対価

その上司は、最終的に異動になった

ひとつ書き添えておきます。

間に立って空気を保つことはできましたが、それは対処であって解決ではありません。上司の問題そのものは残っていました。

だから、問題が起きるたびに上には報告していました。記録として残しておくためです。

その後、その上司は異動になりました。

報告が直接の理由だったのかは分かりません。ただ、何も言わずに耐えていたら、そのままだったと思います。

介護で人が辞める理由は、変えられるものと変えられないものがある

ここまで書いておいて何ですが、僕がやっていたことは、本来やらなくていい仕事です。

上司が普通にコミュニケーションを取れる人なら、間に立つ人間は要りません。誰かがそれをやらないと回らない職場は、その時点で無理をしています。

ただ、現実にはそういう職場があります。そして、そこにいる人たちは普通に働いています。

もしあなたの職場に同じような人がいて、自分の立場では何もできないと感じているなら。

直接ぶつかる以外にも、やれることはあります。間に入る。翻訳する。直接やりとりさせない。それだけで、人が辞めなくなることがあります。

それでも、無理なときは無理です。自分が潰れてまでやることではありません。

介護の人間関係には、職場を変えれば解決するものと、業界の構造として付いてくるものがあります。その見分け方については、別の記事に書いています。

介護の人間関係が最悪だった話|「今日はあの人いるから忖度しなきゃ」が口癖の職場にいました

5年で70万、11年で50万|介護の転職を後悔した、退職金が少なかった僕の実例

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