懐中電灯を咥えて、オムツを交換しました|停電した施設で、夜勤は普通に始まる

大きな地震のニュースは、発生した瞬間のことしか流れません。

その後、電気も水も止まったままの施設で、誰が夜勤に入っているのか。そこは誰も書きません。

介護の仕事を16年やって、辞めました。その間に、大きな地震を2回、夜勤で受けています。

この記事では、停電した施設で夜勤に入ると何が起きるのかを書きます。そして、1回目にやって危なかったことと、2回目までに変えたことも書きます。

読み終えたときに、職場を選ぶときに確かめておくことが、ひとつ増えていると思います。

1回目は、夜勤に入る直前に来た

1回目は、出勤する少し前でした。

職場に連絡はしませんでした。もう出る時間だったからです。行けば分かる、という判断でした。

電気は3日ほど止まりました。ガスは5日くらいだったと思います。水道だけは早く戻りました。

その状態で、夜勤は普通に始まります。誰かが入らないと、夜が回らないからです。

2回目は、明け方に来て、その日の夕方から夜勤だった

2回目は、明け方の3時ごろでした。

日中もずっと復旧せず、そのまま夕方16時半からの夜勤に入りました。

道中、信号は全部止まっていました。大きい交差点では警察が手信号で捌いています。コンビニは閉まっていました。

施設に着くと、電気もガスも水道も、全部止まっていました。

非常用電源は、ありませんでした

先に書いておきます。

その施設に、非常用電源はありませんでした。

あるものだと思っている人もいるかもしれません。実際は、施設によります。そして、それは求人票にも面接にも出てきません。

停電すると、まず照明が消えます。エアコンも止まります。給湯も止まります。記録のパソコンも使えません。ナースコールも当然鳴りません。

呼ばれないということは、こちらから見に行くしかないということです。

懐中電灯を咥えて、オムツを交換する

暗い中でも、やることは変わりません。

問題は、介護の動作がほとんど両手を使うことです。オムツ交換も、体位交換も、移乗も。

片手で明かりを持っていたら、できません。

だから、懐中電灯を口に咥えます。

格好は悪いですが、他に方法がありません。頭に着けるライトがあれば良かったのですが、そんなものは置いていませんでした。

1回目は蝋燭を立てて、危ない思いをした

1回目のとき、廊下やフロアには蝋燭を立てました。

結論から書くと、これは良くありませんでした。

余震で、そこそこ倒れます。

本震のあとは、何度も揺れます。そのたびに火のついたものが倒れる。介護の現場に、燃えるものはいくらでもあります。

そのとき何も起きなかったのは、たまたまです。

2回目までに変えたこと

その経験から、2回目までに変えたことが2つあります。

懐中電灯の上に、水を入れたペットボトルを置く

ひとつ目は、明かりの取り方です。

懐中電灯を上に向けて置き、その上に水を入れたペットボトルを乗せます。光が水の中で散って、周囲がぼんやり明るくなります。

蝋燭のような明るさはありません。ただ、倒れても何も起きません。それがすべてです。

暗い中で人が動く場所に、倒れたら危ないものを置かない。1回目で学んだのはそこでした。

倒れそうなものは、先に固定しておく

もうひとつは、地震が来る前の話です。

1回目のあと、倒れそうなものは全部固定しておいたほうがいい、と伝えました。棚は天井との間に突っ張り棒のようなものを噛ませる。テレビも固定する。

1回目は震度6強でした。そのときに何が動いて何が動かなかったかを見ていたので、言うことに説得力がありました。

結果として、2回目のときに棚は倒れませんでした。落ちたのは皿くらいです。

暗い中で、倒れた棚を片付けながら夜勤をすることにならなかった。これは大きいです。

カセットコンロで、粥を作った

食事も止まりません。

ガスが止まっているので、厨房は使えません。カセットコンロで、簡易的な粥を作って対応しました。

普段どおりのものは出せません。それでも、出さないという選択肢はありません。

「なんで電気がつかないんだ」と、何度も怒られる

ここが、いちばんきついところでした。

利用者の中には、地震があったこと自体を覚えていない方がいます。

その方からすれば、理由もなく電気がつかず、水も出ない。当然、納得できません。何度も訴えてこられます。

説明します。地震があって、今は止まっているんです、と。

そして、しばらくするとまた聞かれます。同じ人に、同じことを。

これは、その方が悪いわけではありません。覚えていられないというのは、そういうことだからです。ご本人にとっては毎回が初めての疑問で、しかも不安な状況にいる。

ただ、こちらは懐中電灯を咥えて手を動かしています。そのたびに手を止めて、説明します。

これも夜勤の仕事のうちです。

2回目は、来られない人もいたし、来てくれた人もいた

職員の側の話も書いておきます。

2回目のときは、来られないスタッフがいました。道路の状況も家庭の状況も人それぞれなので、当然です。

その一方で、シフトに入っていないのに来てくれたスタッフもいました。

結果として、なんとかなりました。これは制度でも仕組みでもなく、その場にいた人たちがそうしたというだけの話です。

翌朝、僕が夜勤明けで帰るころには、職場の電気は戻っていました。

人的被害は、ゼロでした

2回とも、利用者にも職員にも怪我はありませんでした。

だから、こうして書けます。

まとめ:災害が来ても、夜勤は誰かが入る

整理します。

  • 停電しても断水しても、夜勤はいつもどおり始まる
  • 非常用電源があるかどうかは施設による。求人票には書いていない
  • 両手が塞がる仕事なので、明かりは口に咥えるしかない
  • 蝋燭は余震で倒れる。懐中電灯+水のペットボトルのほうが安全
  • 棚やテレビの固定は、揺れる前にやっておくかどうかで結果が変わる
  • 地震があったことを覚えていない方に、何度も説明することになる

災害のときに現場がどうなるかは、入ってみるまで分かりません。

ただ、面接で聞くことはできます。非常用電源はあるか。災害時のマニュアルはあるか。夜間に何かあったとき、誰が来ることになっているのか。

答えられない職場なら、決めていないということです。

そして、こういうことは、求人票の「年間休日」や「賞与4.0ヶ月」の欄には一切出てきません。

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