介護の仕事を続けるコツは何ですか、と聞かれたら。
僕はたぶん、こう答えます。頑張らないことです。
精神論に聞こえるかもしれません。でも、これは気持ちの話ではなく、配分の話です。
介護の仕事を16年やって、辞めました。後半は現場の指導とシフト作成を担当していました。
この記事では、僕が現場で意識していた「頑張らない」の中身と、ミスをしたスタッフに何を返していたかを書きます。
読み終えたときに、今の自分の力の入れ方を、少し見直してもらえたらと思います。
先に書いておくと、手を抜けという話ではありません
誤解されやすいところなので、最初に書きます。
やることはやります。記録も、見守りも、申し送りも、やるべきことは全部やる。
頑張らない、というのは常に全力を出さないという意味です。
いつも100を出していたら、それ以上が必要になったときに出せません。介護は、それ以上が必要になる場面が毎日ある仕事です。
介護は、イレギュラーが前提の仕事です
予定どおりに終わる日は、あまりありません。
誰かが転倒しかける。体調が急に変わる。同じ訴えが止まらなくなる。人が足りない日に限って、重なる。
そういうとき、いつもより力が要ります。判断も、動きも、時間も。
そこで問題になるのが、普段どれだけ余力を残しているかです。
常時100で回している人は、そこで出すものがありません。伸びしろがない状態で、さらに上を求められることになります。
だから、普段は70とか80で回す。残りは、何かあったときのために置いておく。
余裕がないと、ミスが増えます
もうひとつ、現実的な理由があります。
これは自分自身の話ですが、余裕がないときほどミスをします。
張り詰めて、急いで、次のことを考えながら動いていると、目の前のことが抜けます。確認したつもりになる。聞いたつもりになる。
逆に、余裕を持って動いているときのほうが、結果として安定していました。
頑張っているほうがいい仕事をしている気がしますが、実際は逆でした。
張り詰めている人と組むと、こちらも動きにくい
これは、周りへの影響の話です。
頑張って頑張ってピリピリしている同僚と、ゆったり構えながら仕事をこなす同僚。
どちらと組むほうが、仕事がしやすいか。
答えははっきりしています。ゆったりしているほうです。
ピリピリしている人には、話しかけるタイミングを計ることになります。今は声をかけないほうがいいかな、と考える時間が発生する。
その時間は、何も生みません。
話しかけやすい人には、聞ける
そして、ここが実務として効いてきます。
話しかけやすい人には、分からないことを聞けます。
聞けるということは、分からないまま進める人がいなくなるということです。分からないまま進めた結果が、あとで問題になる。
つまり、自分が余裕を持っていることが、周りのミスを減らしています。
笑顔も同じでした。優しさの話ではなく、話しかけやすさを作るための手段です。
介護で笑顔が大事なのは、優しさの話じゃない|16年やって一番効率化できたこと
ミスの報告に「次は頑張ります」と言われたとき
ここからは、人に対して言っていたことです。
何かミスがあったとき、報告に来た人がこう言うことがあります。
「次はこんなことがないように頑張ります」
これに対して、僕はこう返していました。
「頑張らなくていいよ。気をつけてくれれば」
意地悪で言っているわけではありません。
気をつけることは求めています。求めていないのは、気合いの量のほうです。
頑張りますと言った人は、次から張り詰めて仕事をします。張り詰めれば、余裕がなくなる。余裕がなくなれば、またミスをする。
そして今度は、自分は駄目だと思うようになります。
その循環に入らせたくなかった、というだけの話です。
そもそも、ほとんどのミスには何も言いませんでした
ついでに書いておくと、僕が何か言うこと自体、めったにありませんでした。
言っていたのは、重大な事故につながるものか、実際に事故になったものだけです。それ以外は、基本的に何も言いません。
理由は単純で、言う必要がなかったからです。
普段からコミュニケーションを取っていると、「あれ忘れてました」「これやってませんでした」という報告が、その場で上がってきます。
本人が自分で気づいて、自分で言ってきている。その時点で、指摘する意味はありません。分かっている人に分かっていることを言っても、落ち込ませるだけです。
落ち込ませると、次から報告が上がってこなくなります。そのほうが、よほど困る。
常に張り詰めていると、そもそも続きません
最後に、いちばん大きい理由を書きます。
介護は、張り詰めた状態が長く続く仕事です。人の命に関わるし、予定どおりにいかないし、終わりが見えない。
その状態でずっと全力を出していたら、持ちません。
体力の問題ではなく、気持ちのほうが先に切れます。実際、そうやって辞めていく人を何人も見ました。
力を抜くのは、逃げではありません。続けるための条件です。
まとめ:頑張らないほうが、うまくいきました
整理します。
- 手を抜くのではなく、常に100を出さないということ
- 介護はイレギュラーが前提。そのときに出す分を残しておく
- 余裕がないとミスが増える。余裕があるほうが安定する
- 張り詰めている人より、ゆったりしている人のほうが組みやすい
- 話しかけやすい人には聞ける。聞けると、分からないまま進める人がいなくなる
- 「次は頑張ります」には「頑張らなくていい、気をつけてくれれば」と返していた
- そもそも、ほとんどのミスには何も言わない。本人が気づいているから
頑張っている人のほうが、真面目に見えます。実際、真面目なんだと思います。
ただ、それで潰れてしまったら、続きません。
16年続いた理由を考えると、たぶんこれでした。

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