迎えに行ったら、家にいませんでした|介護の送迎は「運転」の時間が一番短い

介護の求人票に「送迎あり」と書いてあるのを見て、どんな仕事を想像しますか。

僕は、車を運転して利用者を乗せてくる仕事だと思っていました。実際にやってみたら、違いました。

運転している時間が、一番短いです。

介護の仕事を16年やって、辞めました。送迎は、夜勤が月6回から3回に減らされたときに、代わりに割り振られた業務でした。

この記事では、介護の送迎で実際に何が起きるのかを書きます。読み終えたときに、求人票の「送迎あり」の4文字が、まったく違って見えるようになると思います。

ドアtoドアと書いてあるが、ドアから出すまでが長い

送迎の説明で、ドアtoドアという言い方をよく見ます。家の玄関から、事業所の玄関まで。言葉だけ見れば、そのとおりです。

問題は、その最初のドアを出るまでに何があるかです。

迎えに行って、準備ができていることは、そう多くありません。着替えが済んでいない。トイレに行きたいと言われる。持っていく荷物がまとまっていない。

独居の方だと、それを手伝う人が家にいません。だから、こちらがやります。

普通に10分以上かかる人は、珍しくありませんでした。

その10分は、運転の時間ではありません。でも、送迎の時間には含まれています。

そもそも、家にいないこともある

準備ができていない、はまだいい方です。

迎えに行って、家に誰もいないことがありました。呼んでも返事がない。

そのときは事業所に連絡して、別居のご家族にも確認してもらいました。返ってきたのは、この時間ならあのあたりにいるんじゃないか、という話です。

探しに行きました。見つかりました。

本人はいつもどおりで、こちらが慌てていることのほうが不思議そうでした。事故でも何でもなく、ただそこにいただけです。

ただ、そのぶん時間は過ぎています。そして、次の家の時間は決まっています。

その間、先に乗せた人は車内で待っています

ここまで読んで、気づいた方がいるかもしれません。

一人で送迎に出ると、4人ほど乗せて回ることになります。ということは、2人目を迎えに行っているあいだ、1人目は車の中にいます。

こちらは家の中で着替えを手伝っています。その位置から、車の中は見えません。

家にいなくて探しに行ったときも同じです。探しているあいだ、車には人が残っています。

家の中と車の中、どちらか一方しか見られない。一人で回る以上、これはどうやっても避けられません。

やれることは、全部やっていました

何もしていなかったわけではありません。できることは決めていました。

  • シートベルトは必ず着けてもらう
  • チャイルドロックをかける
  • 運転席に手が届かない配置で座ってもらう
  • エンジンはかけたままにする(夏場は車内の温度が上がるので、冷房を切るわけにいきません)
  • 相性の良くない組み合わせは、乗せる段階で避ける

最後のひとつについて補足します。送迎の順番を組むのは僕ではありません。だから、そのまま組まれてくることもありました。気づいたときは進言して、変えてもらっていました。

声かけも、もちろんします。すぐ戻ります、と伝えてから離れる。

降りようとする人は、実際にはいませんでした。ただ、可能性がゼロだとは、一度も思っていません。

だから、ずっとヒヤヒヤしていました

一人で複数人を乗せて回っているあいだ、気が休まることはありませんでした。

何かあったら、その場にいたのは自分ひとりです。責任を取ることになるのも、自分です。

対策をしていたから大丈夫だった、という話ではありません。何も起きなかった、というだけです。

状態を見ているのは自分だけ、でも判断はできない

もうひとつ、送迎で決めていたことがあります。

迎えに行った時点で、いつもと違う人がいることがありました。顔色が良くない。いつもより反応が鈍い。本人はいつもどおりだと言う。

そういうとき、僕に判断する権限はありませんでした。

必ず事業所に連絡して、判断を仰ぎます。連れてきていいのか。家で待っていてもらうのか。ご家族に連絡が要るのか。

自分で決めることはできません。というより、決めてはいけませんでした。

当時の僕に決定権はなく、仰がずに自分で判断した場合、その対応が合っていても間違っていても、あとで説教になります。結果ではなく、仰がなかったこと自体が問題になるからです。

ここが、送迎という仕事のいちばん奇妙なところだと思っています。

その場にいるのは自分ひとりです。状態を見ているのも、判断の材料を持っているのも自分だけです。それでも、決めるのは自分ではありません。

現場にいる人間に、責任はある。権限はない。介護の現場では、わりとよくある形です。

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そして、送迎手当はありませんでした

最後に、お金の話を書いておきます。

送迎の手当は、ありませんでした。

そもそも僕が送迎に入るようになったのは、夜勤が月6回から3回に減らされたからです。その代わりに割り振られたのが送迎でした。

夜勤手当は1回あたり6,000円ほど。3回減れば、月に18,000円ほど減ります。そこに、手当のつかない業務が入ってきました。

業務は増えて、報酬は減った、ということです。

求人票を見るときに、夜勤の回数と夜勤手当の額を確認したほうがいい、と別の記事に書きました。理由のひとつがこれです。夜勤の回数は、あとから変わります。

総支給しか見ていませんでした|介護の転職で、次に確かめる5つのこと

まとめ:送迎は、運転の仕事ではありません

整理します。

  • ドアを出るまでに、着替え・トイレ・荷物の準備がある。10分以上かかることも珍しくない
  • そもそも家にいないこともある
  • その間、先に乗せた人は車内で待っている
  • 順番と時間は決められていて、押しても取り返せない
  • 状態を見ているのは自分だけだが、判断する権限はない
  • そして、手当はつかないことがある

求人票に書いてあるのは「送迎あり」の4文字だけです。

これから介護に入る人や、送迎のある職場に移ろうとしている人は、面接で聞いておいたほうがいいと思います。一人で回るのか。何人乗せるのか。時間はどう組まれているのか。手当はつくのか。

聞けば答えてもらえます。聞かなければ、入ってから分かります。僕は後者でした。

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