夜勤の翌朝、自分の要領が悪いだけなんじゃないかと思ったことはありませんか。
僕はあります。何度もあります。
介護の仕事を16年やりました。1社目に5年、2社目に11年です。夜勤は16時半から翌朝9時半までの約17時間で、夜間は基本的にひとりでした。
この記事では、夜勤のひとり体制で実際に何が起きているのかを具体的に書きます。組み立てがどう崩れていくのか。どうやってもハマらない場面で、何を基準に選んでいたのか。そして、負担の大きさを本当に決めているのは人数ではなく何なのか。
読み終えたときに、たぶんこう思ってもらえます。あれは手際の問題じゃなかった、と。
介護の夜勤は、ひとりで相応の人数を見ることになる
夜間にひとりで何人を見るかは、施設によって違います。だから断定はしません。
ただ、共通しているのは、日中より少ない人数で、同じ場所を見ることになるという点です。日中に複数人で回していたフロアを、夜はひとりで受け持ちます。
何も起きなければ、回ります。問題は、何か起きたときにどうにもならないことです。
離れてよさそうな時間は、あらかじめ頭に入れてある
夜勤に入る前に、ある程度は組み立てています。
誰がどのくらいで落ち着いていて、どの時間帯なら少し目を離せそうか。それを頭に入れた状態で入ります。
ただし、絶対に安心な時間というものはありません。離れてもよさそう、というだけです。何も起きない保証はどこにもない。
その前提で、記録を書いたり、別の業務を片付けたりします。
夜勤は、時間のパズルを組み替え続けている
実際に始まると、組み立てた通りにはいきません。
たとえば、転倒のリスクが高い方が、寝ずに動き出す。その人から目を離せないので、こちらは近くにいます。
そこに、別の方がトイレに起きてくる。この方も介助が要りますが、便座に座っている間は少し離れられます。
そして、さらに別の方が起き上がってくる。こちらの声かけが届きにくい方だとすると、今度は距離を詰めるしかありません。
こうなると、誰にどれだけの時間を使えば全部が成立するかを、その場で組み替えることになります。
しかも、組んだ端から前提が変わります。相手が動けば、また組み直しです。動きながら、頭の中で順番を入れ替え続けている状態になります。
どうやってもハマらない形が来る
たいていは、組めます。
ただ、どうやってもハマらない形が出てきます。
誰かから目を離すか、誰かを待たせるか。どちらかを選ばないと成立しない。そういう場面が、必ず来ます。
そのとき何を基準にしていたかというと、はっきりしています。
転倒と転落だけは避ける。
怪我に直結しますし、場合によっては命に関わります。だから、そこから逆算して決めていました。
選ばなかったほうに何も起きなければ、それでよかったことになります。何か起きたら、そこを見ていなかったことになる。この感覚を抱えたまま、朝まで続きます。
ハマらないときは、ピースのほうを変える
そのまま諦めるかというと、そうでもありません。
組み合わせがどうしても成立しないときは、相手の動きのほうに手を入れて、時間を作ります。
起き上がるまでに時間がかかる方なら、一度ベッドに横になってもらうよう促す。テーブルに座って飲み物を飲んでもらう。洗濯物を畳んでもらう。
どれも、無理に止めているわけではありません。その人にとって自然な行動に置き換えているだけです。
稼げるのは、正直、数分です。洗濯物もすぐにやめてしまうかもしれません。それでも、その数分で別のところを片付けられれば、次が組めます。
そして当然ですが、こういう手が一切通じない方もいます。そのときは、別の組み方を探すしかありません。
夜に使えなくなるのは、その場を離れる手
日中にやっている対応の中には、夜には使えないものがあります。
たとえば、帰りたいと言って出て行こうとする方に、一緒に歩いてついていくという手があります。あれは、他にスタッフがいるから成立します。夜はフロアを空けられないので、選べません。
一方で、表情を見てタイミングを待つことや、天気などの条件を持ち出すこと、自分が弱い側に回る言い方は、夜でも使えます。
夜勤で「僕だって帰りたいですよ、朝まで付き合ってくださいよ」と言っていたのも、そのひとつです。
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夜勤の負担は、人数より利用者の構成で決まる
ここは、外からはまず見えない部分だと思います。
同じ人数を見ていても、負担はまったく違います。決めているのはその日のフロアにどういう方がいるかです。
状態が落ち着いている方が多い日や、重度で寝たきりの方が中心の日は、夜間に動きが少なくなります。
重度の方は、身体的な介助の負担は大きくなります。ただ、こちらで順番を決められます。この方を終えてから次、という組み立てができる。段取りが立ちます。
負担が大きいのは、自力である程度動けて、認知症のある方が多い日です。身体的な介助はそこまでではありません。でも、順番を決められません。いつ動き出すか分からないので、常に見ていることになります。
直感とは逆かもしれません。手がかかるイメージがあるのは重度の方ですが、夜勤の負荷という意味では、動ける方が多いほうがきつくなります。
そして構成は、重くなる方向にしか動かない
もうひとつ、押さえておきたいことがあります。
利用者の状態が、良くなっていくことはほとんどありません。時間が経てば、構成は必ず重くなります。
つまり、今が落ち着いていても、それは今日の話でしかないということです。
職場を選ぶときに現場を見せてもらったとしても、そこで見えるのはその日の構成です。半年後の答えにはなりません。
そして、構成が重くなっても、人が増えるとは限りません。業務量だけが上がっていく。
精神が削られるのは、同じことが一晩中続くから
ここまで書いたのは、判断の話です。ただ、夜勤でいちばん削られるのは、そこではないかもしれません。
同じことが、一晩中繰り返されることです。
眠らずに歩き回る方がいれば、朝までそれが続きます。同じ訴えを、同じ方から、何度も受けることになります。
見守りが多いと歩く距離も増えるので、体も疲れます。ただ、それ以上に精神が削られる。
日中なら、他のスタッフと代われます。同じ方に対応し続けて消耗してきたら、少し離れて別の業務に回れる。夜は、代われません。
対応が間違っているわけでもありません。うまく落ち着いてもらえても、しばらくすればまた同じことが起きます。技術があっても、回数は減らない。
それを、代わりのいない状態で、朝まで受け続けます。
そのうえで、17時間ある
ここまで書いてきたことが、全部17時間続きます。
仮眠時間は、制度としてはあります。ただ、ひとり体制で取れるものではありません。
そして、何か起きたときに「仮眠中でした」は理由になりません。制度上は休んでいいことになっていて、実際には取れず、それでも責任は問われる。
日勤の倍以上の時間を、その状態で過ごします。
ひとりで判断しないで済むようにしていたこと
そのうえで、少しでも楽にするためにやっていたことがあります。
体調に関わることは、ナースに直通で連絡して指示をもらえる体制がありました。
そして、どういう状態なら即連絡するか、どういうときは迷った時点で連絡するかを、あらかじめ決めていました。
ただ、人によっては「そんなことで」と不機嫌になることもあります。そうなると、連絡していいかどうかを、その場で自分で判断することになる。
だから僕は、自分が受ける側のときは、こう伝えていました。
「迷ったら、いつでも連絡していい。寝ていても、電話一本で必ず起きるから」
連絡していいかどうかを、本人に判断させない。その迷っている数十秒が、いちばん危ないからです。
まとめ:夜勤がきついのは、人数の問題だけではない
整理します。
夜勤がきついのは、人が少ないからだけではありません。
組み立てが常に崩れること。どうやってもハマらない形が来ること。その判断をひとりで背負うこと。同じことが一晩中続いて、代われないこと。そして負担の大きさが、自分ではどうにもできない利用者の構成で決まること。
だから、夜勤がきついのは手際の問題ではありません。最初からひとりでは満たせない条件になっているだけです。
自分が要領が悪いからだと思っている人がいるなら、たぶん違います。
その職場の夜勤が普通かどうかは、中にいると分からない
ひとつだけ、付け加えておきます。
夜間に何人を見るのか、その構成はどうなっているのか、何かあったときに連絡できる先があるのか。これは職場によってかなり違います。
そして、自分の職場が普通なのかどうかは、中にいると分かりません。求人票にも書いていません。
僕は条件を確かめないまま職場を変えて、失敗した側です。
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