なぜ別の施設じゃなく介護業界ごと辞めたのか|16年いた私が出した結論

介護の仕事に限界を感じたとき、選択肢は二つあります。別の施設に移るか、介護業界そのものから出るかです。

私は16年、介護業界にいました。そして最終的に、同業への転職ではなく、まったく畑違いの異業種へ出る道を選びました。この記事では、なぜ「別の施設」ではなく「業界の外」を選んだのか、その理由を正直に書きます。今、同じところで迷っている人の判断材料になればと思います。

施設を変えても、給料の天井は変わらない

辞めたくなったとき、最初に考えるのは「もっと条件のいい施設に移ればいいんじゃないか」だと思います。私もそう考えました。でも、調べて、考えて、出した結論はこうでした。施設を変えても、根っこは同じだ、と。

まず、土台が低い。介護の基本給は、最低賃金に近い水準からのスタートであることが珍しくありません。その低いところから始まって、私の場合、16年いても、給与のベースはほとんど変わりませんでした。昇給は、年に1,500円から2,000円ほど。何年勤め続けても、上がり幅はこの程度です。

収入を本気で上げようと思えば、管理職以上を目指すしかありません。でも、その管理職になったところで、すぐに頭打ちが見えている。どれだけ頑張っても、行き着く先が見えてしまっている。これは、施設を移ったくらいでは変わらない壁でした。

そして、こわいのはここからです。上は頭打ちで天井が見えているのに、下には大きく振れる。残業代は、サービス(つかない)という職場も珍しくありませんでした。休みの日に買い出しに行かされたり、カンファレンスに出るために出勤したり、ということも、当たり前のようにありました。処遇改善の手当にしても、法人によって扱いがまるで違う。上がる幅は年2,000円で見えているのに、もらえるはずのものがもらえない下振れの方は、いくらでもあった。リスクとリターンが、まるで見合っていなかったのです。

給料が上がらないのは、個人の問題ではなく構造の問題

なぜ、これほど給料が上がらないのか。突き詰めると、これは個人の努力でどうにかなる話ではありませんでした。

介護の報酬の原資は、介護保険で大枠が決まります。つまり、現場の人間がどれだけ必死に働いても、その頑張りがそのまま給料に反映される仕組みにはなっていない。原資の上限が、制度の側で先に決まっているからです。

そして、その制度を国が大きく変えるつもりがあるようには、私には見えませんでした。さらに言えば、要介護度の振り分けの基準にしても、現場の実際をわかっている人間が作ったとは思えないところが、正直、あります。実態と基準がズレたまま、その枠の中で報酬が決まっていく。この構造がある限り、どこの施設に移っても、根本は同じだろうと思いました。

人手不足は、これから良くなる気配がない

「これから改善されるなら、もう少し耐えよう」とも考えました。でも、現場で起きていたことは、その逆でした。

技能実習生をはじめ、外国人の人材が入り始めてから、日本人がほとんど来なくなりました。これ自体を否定する気はありません。ただ、現場で起きていた現実として、いくつか無視できないことがありました。

一つは、給料です。外国人の給与ベースが低く設定されている以上、日本人の給料が上がっていく方向には、構造的になりにくい。もう一つは、業務の負担です。制度や言葉の壁から、外国人スタッフにはまだ任せられない業務が多くあります。結果として、配置人数を削られた上に、その人ができない分のカバーまで、現場の日本人スタッフに乗ってくる。特に書類まわりの負担は、本当に大きなものでした。

つまり、人手不足が和らぐどころか、現場の一人あたりの負担はむしろ増えていく。この流れが近いうちに反転するとは、どうしても思えませんでした。

長く勤めた施設の方が、退職金は少なかった

最後に、これを書いておきます。

私は介護業界に16年いました。内訳は、最初の施設に5年、次の施設に11年です。それぞれを辞めたときの退職金は、5年勤めた施設で70万円ほど、11年勤めた施設で50万円ちょっとでした。

お気づきだと思います。長く勤めた施設の方が、退職金は少なかったのです。普通なら、勤続年数が長いほど退職金は増えるはずです。なぜ逆転したかといえば、答えは単純で、法人が違うからです。退職金の規程も、退職金共済に入っているかどうかも、法人ごとにまるで違う。つまり、同じ介護の仕事を同じように続けても、どの法人にいたかで、もらえる額がここまで変わってしまう。

ここで「退職金が法人で変わるなら、給料も法人を選べば上がるのでは」と思うかもしれません。でも、この二つは別の話です。給料のベースは介護報酬で天井が決まっているので、どの法人に行っても、業界全体の上限からは出られません。法人による差はあっても、せいぜい誤差の範囲です。一方で退職金は介護報酬とは別で、各法人が独自に積むもの。だからこそ、法人ごとの振れ幅が給料以上に大きく出て、勤続年数の逆転まで起きてしまう。給料は業界の天井に縛られ、退職金は法人ごとの当たり外れに左右される。どちらにしても、現場の自分の努力ではどうにもならない、という点だけは同じでした。

働いている間、給料は年に1,500〜2,000円しか上がらない。そして辞めるときの退職金は、勤続年数すら当てにならない。働いている間も、辞めるときも、報われない。この現実を並べて見たとき、自分の中で何かが完全に切り替わりました。

誤解しないでほしいのですが、介護の仕事そのものに価値がない、と言いたいわけではありません。むしろ尊い仕事です。ただ、その尊さに、待遇が追いついていない。そして、それを変える力は、現場の個人にはない。だったら、自分の人生をどこに置くかは、自分で選んでいいはずだと思いました。

だから私は、業界の外に出た

別の施設に移れば、人間関係や多少の条件は変わるかもしれません。でも、給料の天井も、制度の構造も、人手不足の流れも、業界の中にいる限りはついて回ります。場所を変えるだけでは、根っこは変わらない。これが、16年いて私が出した結論でした。

だから私は、同業ではなく、まったくの異業種へ出る道を選びました。怖さはありました。それでも、出てみて、選択は間違っていなかったと思っています。

もし今、「別の施設に移るか、業界の外に出るか」で迷っているなら。一度、介護の外にどんな世界があるのかを、見てみてほしいと思います。見た上で、それでも介護を続けると決めるなら、それも立派な選択です。大事なのは、知らないまま縛られないこと。まずは登録して、外の選択肢を知るところから始めてみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました